2005年08月04日

小林古径展ー印象派に劣らぬ日本の美ー

小林古径小林古径展は予想以上に素晴らしく、その画風の広がりに感銘を受けた。

古径の作風はいくつかの時代に分類される。まず初期の明治時代後半には歴史画を描いている。それ自体は他の画家と比べて特に優れているという感も受けなかったが、それよりもスケッチに心を惹かれた。この時代のスケッチブックが芸大に残されていて、展示されていたのだが、そこに描かれた花、猫、鳥、虫、鼠や人物などの精緻なスケッチから、古径の基礎がこの時代に築かれたことが分かる。

こうした写生や模写をもとにした高い技術の歴史画に、大正ロマンの息吹が加わったのが写真の”極楽井”である。その華やかさはそれ以前の毅然とした画風とは明らかに一線を画している。絹の裏側から金箔を貼る伝統の裏箔技法により、少女たちの衣装の華やかさは増幅されている。この作品以外でも、”竹取物語”の六連作の華やかさは、見るものを平安の時代の優美さ、雅やかさの世界へ誘う。”木蓮”や”芥子”も実物よりも遥かに雅やかで”ほー”とさせられる。圧巻は”機織”で、ヨーロッパ留学の模写の成果らしいが、華やかさの上に機や女性の着物に非常に細い、繊細な線が用いられていて圧倒される。

昭和になると古径の興味は生き物に向けられる。二曲一双の琳派風の”鶴と七面鳥”の鶴の躍動感とそれに対する七面鳥の堂々さは見事というほかはない。”孔雀”の荘厳さは動物ではなく、仏が変化したかのようである。”猫”の顔つきは猫のそれではなく人間のそれのようで、堂々としている。

古径の描く草木、花々には独特の質感がある。柿を多く描いているが、木々にたわわに実った柿の実も、鉢に入った柿の実も、すべてみずみずしい。二曲一双の”唐蜀黍”はやはり琳派風で、左は動的で、葉の色が濃く、右は静的で薄く、対照的に描かれている。素晴らしい作品だ。

人を描いた作品では、切手にもなった”髪”は当然のように人目を惹く。細い線を重ね合わせて描かれた髪の毛の質感が素晴らしく、”機織”同様ヨーロッパ留学の模写の成果が結実しているといえよう。”琴”の少女の着物の美しさもこうした成果の一つだろう。その表情や指使いなど、印象派の巨匠にもひけをとらない。晩年の作品”楊貴妃”は、能面に映された悲しみの表情と、その衣装の華やかさとのギャップが心を打つ。

心惹かれる作品がこんなに多い展覧会も珍しい。ほとんどが秀作である。私が鑑賞した7月17日は東京展の会期の最終日前日であったが、出品目録によると、この後期に見られたのは全体の半分強に過ぎない。

この展覧会は7月26日から9月4日まで京都国立近代美術館で開催中である。残りの半分を見れるなら、是非とも夏の暑い京都に行きたいものだ。


cornell5553 at 18:40│Comments(1)TrackBack(0)美術評論 

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この記事へのコメント

1. Posted by fan   2005年08月04日 22:29
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