2005年07月27日

ミリオンダラー・ベイビーーいつ死んでも悔いのない人生ー

ミリオンダラー・ベイビー 今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞(クリント・イーストウッド)、主演女優賞(ヒラリー・スワンク)、助演男優賞(モーガン・フリーマン)を獲得したミリオンダラー・ベイビー。文句なく今年一番の秀作だろう

アイルランド移民で、田舎で貧困の中で育ち、ウェイトレスであるヒラリー演じる主人公マギー。彼女の唯一の楽しみはボクシング。31歳の彼女は、クリント演じる名トレーナーフランキーへの弟子入りを希望する。フランキーは女は教えないと断るがマギーは勝手にフランキーのジムに入り、黙々と練習を続けるジムに誰もいなくなっても、ウェイトレスの仕事以外はすべてボクシングに情熱を注ぐマギーのひたむきさに、ジムの管理を任されるモーガン演じる元ボクサースクラップがまず打たれ、フランキーに気に入られるようサポート、そして遂にフランキーの頑固さをも打ち負かし、フランキーに弟子入りする

この第一部で描かれているのはマギーの”ネバー・ギブ・アップ”の精神。31歳というボクサーにとっては遅すぎる年齢にも関わらず、その事実をフランキーに指摘されても、決してチャンピオンになる夢を諦めようとしないファッションや異性など、普通の女性なら心を奪われる事物にまるで感心を払わず、ただひたすらにボクシングに情熱を傾けるこの姿に多くのアメリカ人は心を打たれたのだろう

フランキーのボクサーへの思いやりも大きなテーマの一つだかつてのスクラップの試合にセコンドとしてついた際、まだ頑張れるというスクラップのボクサー固有の頑固さをとめられず、結果として片目を失明させてしまったことへの負い目。そのことがトラウマとなり、自分の育てたボクサーが致命傷を負うことを恐れ、フランキーはチャンピオンとのタイトル戦を遅らせ続ける。そのためにせっかく育てた世界チャンピオンを狙えるボクサーがタイトル戦目前に他のマネージャーのもとに走ってしまう金のことしか考えず、ボクサーのことなど金儲けの道具としか思っていない他のマネージャとは正反対のフランキーの優しさしかし血気はやるボクサーがその優しさを理解するのは非常に困難だ

そのため、自分の言いつけを守らず試合に出たがるマギー。フランキーは嫌気がさし、彼女を他のマネージャーに紹介してしまう。しかし、心配で彼女の試合を見に行くと、彼女をただの商売の道具にしているマネージャーに憤り、ついに彼女のマネージャーだと自ら宣言するこの後は、名マネージャーを得たマギーは快進撃を続ける。アイルランド人受けするゲール語(古代アイルランド語)の”モ・クシュラ”というニックネームもフランキーに与えられ、ヨーロッパ各地を転戦、一躍人気者になるここまでが第2部。

この後の衝撃的なラストへ続く第3部についてはネタバレするのでここでは書かない。

マギーとフランキーの親子愛も大きなテーマ不幸な家庭に育ち、今はもう会えない優しかった父親への思いを捨てきれないマギーは、父親のような存在をフランキーに見出す。反対に、音信不通となった娘へ、住所不定で返送される手紙を書き続けるフランキーは、娘への満たされない愛情をマギーにささげるようになっていく。ラストシーンでは、二人の愛情は本当の親子のものより美しいレベルにまで浄化し、人々の心を打つ”モ・クシュラ”がフランキーのマギーへの思いをこめた重要な名前であることも、ここで明らかになる

この映画からは勇気を与えられた決して諦めずに、頑張ればいつか報われるということも改めて教えられた宗教などで教えられることよりも、自分の信念を貫く勇気の大切さも教わった

アメリカでは、9・11テロ以降、人々が死について真剣に考えるようになってきたそうだ。それまでは生の楽しみを満喫し、享楽的な人生を送ってきた人も、生とは死と隣り合わせである事実を認識するようになった。いつ死んでも悔いのないような人生を送ることがいかに重要かを教えてくれるこの映画は、まさに今のアメリカが求めていた映画だろう

頑張ることが美徳ではない現在の日本でこの映画が受け入れられず、すぐにレイトショーのみになってしまったのは、本当に残念だこの国の将来が本当に心配だ。


cornell5553 at 12:43│Comments(0)TrackBack(4)映画評論 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. ミリオンダラー・ベイビー  [ Akira's VOICE ]   2005年07月27日 17:34
静かに熱く胸を打つ,味わい深く濃厚な人生ドラマ!
2. 人間の生き方を問う映画◆『ミリオンダラー・ベイビー』  [ 桂木ユミの「日々の記録とコラムみたいなもの」 ]   2005年07月29日 08:24
http://yaplog.jp/soranoki/tb_ping/33
 7位に「ミリオンダラー・ベイビー 3-Disc アワード・エディション」がラ...
4 「ミリオンダラー・ベイビー」観ました。 映画館で観てDVDでも観たのですが、今回は前回観たトキよりも点数はちょい低いです。前回は89点、今回は84点です。 ネタバレ要注意! 前作の「ミスティック・リバー」がイマイチで今回はアカデミー賞総ナメでどうなんやろ?っ...

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔