2005年06月24日

ハンス・アルプ展ー心地よいバランスー

アルプ日本におけるドイツ2005/2006の一環として、川村記念美術館でハンス・アルプ展が開催されている(4月5日ー6月26日、この後岡崎、群馬に巡回予定)。ハンス・アルプは、常に独仏の争いの場となるアルザス地方でドイツ人、フランス人の混血として生まれたバイリンガリストである。活動の場はドイツ、フランス、スイスにまたがっている。パリでマティス、シニャックと展覧会を開いたり、ミュンヘンでカンディンスキー、クレー、マルクと共に”青騎士”に参加、その後ケルンでエルンストと知り合い、パリでモディリアーニ、ピカソと出会うなど、点描派、野獣派、キュービスト、ダダイストなどあらゆるタイプの画家と交流していたのが分かる。ダリ、タンギーなどシュルレアリストとも後年は活動を共にしている

こうした華麗な経歴を持つアルプが、一番情熱を注いでいたのがブロンズ彫刻である。今回展示されている1960年代の作品群はすべて、”腕のようなもの、胸のようなもの、頭のようなものなど”で構成され、人間の形をなしてはいないが、すべてが美しい。その曲線の単純化は究極となり、美を形成する

かつてアート・マネージメントを学ぶため、ロンドンに短期留学時代しが、その際、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート出身の画家から多くを学んだ。テート・ギャラリーにあるマティスの女性像は3体あるが、制作年代はそれぞれ20年ぐらい離れていたと思う。最初の作品ではきっちり構成されていた女性像が、最後の作品では、できるかぎり単純化された曲線による”ヘタウマ”作品になっていた。ぱっと見では一番素晴らしくみえる、きっちりつくりこまれた作品が、実は一番昔の稚拙な作品で、画家が行き着いたのが、究極に単純化された最後の作品だという説明を受け、衝撃を受けた。このアルプの60年代の作品も、同様である。添付の写真の作品”デメテルの人形”も非常に美しい。このカーブの始まる位置が、そしてカーブの大きさが少し違うだけで、作品は陳腐化するだろう。究極のバランス感覚である。

ブロンズ以外では木やジュラルミンも用いられている。ジュラルミン作品”対照をなす柱”は同じ柱をさかさまに立てたものを並べてあるのだが、そのバランス感覚の見事さは言葉では言い表せない。

展覧会の最後は30〜50年代の作品群で、テーマは”配置と構成”。無秩序に並べられたかのような造形には法則がある。偶然におかれた紙片を、もっとも心地よい位置に並べ替えている。この造形の形、大きさ、位置が少しでも狂えば、この心地よさは失われ、何故だか分からない不愉快感が生まれることだろう。

やはりロンドン時代に教えられたのだが、何も考えずに線を引き、赤、青、黄色のブロックをおいたような絵を描くピエ・モンドリアンは、やはり究極のバランス感覚の持ち主だったそうだ。モンドリアンの絵なら真似できるなど大間違いだそうだ。このアルプのオブジェの心地よさも、モンドリアンの絵画同様、究極のバランス感覚があって初めて可能となる。

アルプの作品は欧米の美術館ではよく見かけるが、久しぶりに彼の作品を堪能でき、大満足だった。川村美術館の常設展も素晴らしく、特にジョゼフ・コーネルの作品群、マーク・ロスコーの部屋はわざわざ訪れる価値がある。そして、シャガールの”ダビデ王の夢”とかいう名前だったと思うが、文句なしの傑作だ。

美術館のまわりには池があり、白鳥も見られるし、遊歩道では森林浴もできる。東京から僅か1時間のドライブで着いてしまう。出かけたのが遅く、あやめ鑑賞は残念ながらできなかったが、また是非とも訪れてみたい。


cornell5553 at 11:43│Comments(2)TrackBack(1)美術評論 

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1. 「ハンス・アルプ展」  [ 弐代目・青い日記帳 ]   2005年09月26日 21:51
群馬県立館林美術館で開催中の 「ハンス・アルプ展」に行って来ました。 (館林美術館については明日記事を別にupします) この展覧会は既に皆さんがお出かけになり、感想を書かれているように 今年の1月15日から以下の日本各地を巡回していたものです。 ・神...

この記事へのコメント

1. Posted by アサヲ   2005年06月24日 14:13
トラックバックありがとう御座いました。
拝読させていただいて
ハンスアルプの作品を食わず嫌いなようなもので
ほとんど鑑賞もせずに素通りしたことを
後悔しました。
「ダビデ王の夢」は本当に素晴らしい作品でしたねえ。
2. Posted by 素人貧乳ギャル   2011年10月31日 01:52
2 G7;E00i}, gal.ex-navi.biz, 素人貧乳ギャル, http://gal.ex-navi.biz/shiroto/117.html

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