2005年06月13日

ピナ・バウシュ”ネフェス”ーモダン・バレエと民族舞踏の融合ー

pina念願のピナ・バウシュを初めて見た踊りを見るのが好きだで、出張の度にオペラ座、ロイヤル・オペラ、NDTなどを鑑賞してきたが、クラシック・バレエよりもモダン・バレエがどちらかというと好きだ。また、民族舞踏好きなので、今までにケニヤ、スリランカ、タイ、バリ、トルコ、メキシコ、スペイン、アイルランドなどの舞踏を見てきた今回のピナ・バウシュが今まで見た中で一番の出来だったと思う

今回の公演”ネフェス”は劇団員が3週間イスタンブールに泊まりこみ、その際の印象を作品にしたそうだビザンチン帝国時代のコンスタンティノープルといわれた時代から、イスタンブールは東西文化が融合するオリエンタル(東洋)世界とオクシデンタル(西洋)世界の架け橋のような存在だった。今回の公演もそのイスタンブールを象徴し、ドイツ人中心の西洋人ダンサーと、インド人、インドネシア人、韓国人、日本人からなる東洋人ダンサーが入り乱れての東西融合を織り成していた西洋のクラシック・バレエを基礎に、ピナが演出した西洋風のモダン・バレエと、インド人ダンサー、インドネシア人ダンサーによる東洋の伝統的な民族舞踏とのミクスチャーにより、新境地を作り出している

インド人女性ダンサーがマハラジャ映画に出てくるように、甲高い声をだしながら、数千年変わらぬ音楽に合わせ、サリーかパンジャビ・ドレスを着て踊るなら、ただのインド民族舞踏だしかし、ピナの演出で踊るインド人ダンサーは白や赤のドレスをまとい、チルドアウト系の涼しい感じのヌーベルジャズボーカルに合わせて、モダン・バレエの要素もからめながら舞い踊るそこからの印象は暑苦しい、湿気の多いインドを思わせるものではなく、北欧の涼しい夏の夜といったものだこれこそ、まさに伝統的なオリエンタル民族舞踏と、オクシデンタル世界のモダン・バレエの融合といえよう

白いドレスを着たインド人女性ダンサーが頭にのせた天秤棒に、水を入れた二つのビニール袋を下げてしずしずと歩いてくる。音楽はトルコ風のチルド・アウトもの。そこに二人の男性ダンサーが現れ、女性ダンサーの足をそれぞれ片足ずつ持ち、最初は地面の高さから、一歩一歩歩くたびに、自分の胸の高さまで持ち上げていく。神秘的な音楽を聴きながらその情景を見ていると、聴衆は、まるで白いドレスの女性が空中浮遊しているような幻想にとらわれる。非常に美しいシーンだ

ピナの舞台の主役は女性だ。男性ダンサーも同じ数だけいるのだが、主役はあくまでも女性ダンサーだ。昨今のベジャール以来の男性ダンサー復権の動きとは正反対だ。女性演出家による、女性ダンサーのための舞踏団といえようか?いろいろな国籍のダンサーが官能的な、神秘的な、コミカルな、様々な踊りをエネルギッシュに演じている

今回のメイン・ダンサーであるインド人ダンサー、シャンタル・シヴァリンガッパは素晴らしかったパリ在住だがインド伝統舞踏の伝統を受け継いだ舞踏家だそうで、そういった意味でも東洋と西洋の融合にはうってつけだったのかも知れない。

もう一つ感心したのが、ダンサーが全て日本語での台詞回しを完璧にこなしていたこと。日本語でせりふを言うなんて面倒くさいことを、ダンスの練習だけでも大変だろうに、よくこなしているものださすがダンス・シアターというだけのことはある。この日本語でのいいまわしによって演じ手と聴衆との距離は飛躍的に近くなる勤勉なドイツの劇団ならではといったらいいすぎだろうか

ピナの舞台を残り全てみてみたいものだとりあえずDVDでも探してみよう


トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 / Nefes(呼気)  [ 某放送局員の趣味音楽他雑記 ]   2005年06月17日 12:34
ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 / 「ネフェス」Nefés(呼気) 2005.6.12 新宿文化センター 大ホール ピナ・バウシュはドイツの振付師・ダンサー。アルモドバル監督の「トーク・トゥ・ハー」の冒頭でたおやかに美しい踊りを披露していた女性。この公演は、

この記事へのコメント

1. Posted by Moebon   2005年06月16日 01:39
ずるい!(笑) 私もピナは見に行きたかったのに…
アルモドバルの“Talk to her”でもあの存在感はすごいです。。。
2. Posted by fiji   2005年06月16日 19:24
talk to herだけ見てないから。でもピナが出てるなら見てみます。誘えばよかったね。
3. Posted by mellotron777   2005年06月17日 12:36
こんにちは 僕は見たのですが不覚にも寝てしまいました(悔) 大変細かな記述で参考になります! TBさせて頂きました よろしくお願いします

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔