2005年05月09日

アンソール展ー仮面と髑髏に魅せられた画家ー

アンソール東京都庭園美術館で開催中(4月23日〜6月2日)のアンソール展に出かけた。アンソールを知ったのは学生時代、中公新書だったか幻想芸術の世界でという本で。そこではギュスタブ・モロー、オーギュスト・ルドンを初めとして、幻想的な画風の画家が紹介されていた。子供の頃からホメロスやアーサー王伝説などの世界に惹かれて育ったので、ギリシャ神話や聖書を題材に幻想的な作風を展開するモロー、ルドン、ベックリンに高校、大学時代は関心を持っていた。主流の絵画、印象派などを好きになるのは大学時代、高階先生に出会ってからだ。
 
今回の展覧会で初めてアンソールの画風の変遷が理解できた初期は写実主義、クールベ風、1880年代になると印象派と出あったのか、印象派風の筆触分割による、線を廃した、おぼろげな輪郭の画風となる。元来、人間の内面について考える、白昼夢をみるような内面的な性格だったのだろう、印象派的な明るい、脳天気な画風はすぐに影をひそめ、80年代半ばにはルドンに影響されたような、象徴派的な重い画風に移る。そして、後期のターナーのように、対象が色の洪水の中に埋没してしまうかのような画風に至る。
 
この画風を貫けば、正統派の画家としてとおせたのではないか?しかし、87年になると出てくるのである、骸骨と仮面がアンソールは、85年から86年にかけて、北斎漫画を写したデッサンを発表している。北斎漫画とはいわゆる富士山などを描いた風景画の富嶽三十六景と異なり、葛飾北斎が空想の世界を描いたものだ。印象派などに影響を与えたのはこちらのほうである。アンソールは恨みをもって死んだ将門、物部守屋、大塔宮などを参考に描いている。この北斎漫画に影響を受けたのか、87年以降骸骨と仮面が多く描かれるようになる。これ以降はいわゆるニッチな世界に生きる画家として、本当の美術好きか、骸骨・仮面好きの人向けの画家として生まれ変わる
 
私はなぜアンソールに惹かれるのか?本当の美術好きかつ髑髏好きだからだろうか?家にはメキシコの”死者の日”にちなんだ骸骨アートなどいくつかある。別に髑髏が好きで買ったのではないが、自然と家にある。ロシアの画家の聖書を主題にした連作の1枚も購入、飾っている。抽象画で判断しずらいが、これも髑髏らしい今流行しているゴシック・スタイルの骸骨アクセサリー・ファッションも大好きである
 
いずれにしろ、感受性の強い画家が選ぶテーマとして生、性、死はよく選ばれるテーマである。中世からキリスト教の布教の際に、文盲の庶民向けに、死を指し示す絵の言葉として、髑髏は広く使われてきた。アンソールのみが描いているわけではない。やはり彼の特徴は仮面であろう
 
仮面はもちろん自己の内面を覆い隠すために使われるものである。通常はその無表情の中に、秘められた感情をかもし出す。そうした通常の仮面と異なり、アンソールの仮面はなぜか生々しい仮面自体が意識をもっているかのようだ仮面と髑髏の作品以外にも細密画風の作品あり、ジャン・デゥビュッフェ風のものあり、なかなか楽しめる展覧会だった
 
ゴールデン・ウィークの東京は本当に空いている地方からの人で多少込んではいるが、彼らが東京まできてわざわざ映画や美術を見ることはまれだろう。おかげで海外にいるようにゆっくり作品を鑑賞できたゴールデン・ウィークの東京は美術鑑賞がおすすめだ
 
 

cornell5553 at 15:04│Comments(3)TrackBack(1)美術評論 

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1. ルノワール  [ ナムナム波乱万丈! ]   2005年05月18日 21:57
僕はルノワールが好きなんです。きっかけは、永谷園のお茶漬けの葛飾北斎でした。特に富嶽三十六景の赤富士コレは中学生心に、何か動かされました。ま、そこからはあまり突っ込まなかったのですが高校に入学して、ルノワールに出会いました。北斎の力強さに対して、ルノワー

この記事へのコメント

1. Posted by Moebon   2005年05月10日 02:22
アンソール、やっぱり行ったのですね。
空いてましたか、堪能出来てよかったですね。

後はノーコメント(笑)
2. Posted by diazepam   2006年04月12日 23:33
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