2005年03月24日

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールとエミール・ガレーその類似性ー

ラ・トゥール先々週末にジョルジュ・ド・ラ・トゥール展、先週末にエミール・ガレ展に出かけた。二人の巨匠にいくつかの類似点があると気づいたのは、昨晩眠れぬ夜をすごした真夜中のことだ。
 
1.ロレーヌ地方出身、2.ドイツとフランスとの間の戦争に巻き込まれる、3.王室とのつながり、4.工房のリーダー、5.光との関連の5点だ。一つずつ解説していきたい。
 
まず、ロレーヌ地方出身についてだが、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールは16世紀末に当時はフランスから独立を保っていたロレーヌ公国に生を受ける。その首都であったナンシーからほど近い都市である。一方ガレが生を受け、活躍したのがナンシーであるのはご存知であろう。
 
次にドイツとフランスとの間の戦争に巻き込まれることだが、これはこのロレーヌ地方とアルザス地方の宿命であった。ラ・トゥールの時代にはフランスと、後のドイツである神聖ローマ帝国との間で30年戦争が勃発し、帝国方についたロレーヌ公国はフランス王ルイ13世に征服される。一方のガレはナポレオン3世の下、これまた将来のドイツ帝国の中心となるプロシアとの普仏戦争に従軍している。敗戦の結果、ロレーヌ地方の一部はプロシアに併合され、ガラスの提供をうけていた工場があるマイゼンタールもプロシア領となった。
 
王室とのつながりについては、ラ・トゥールは当初ロレーヌ公爵アンリ2世の、後にルイ13世の国王付画家となる。ガレは父親の時代から皇帝陛下御用商人として作品をナポレオン3世に提供している。
 
親方として工房で描くという概念は、このラ・トゥールの生きた16世紀末から17世紀にかけては当たり前のことで、レンブラント、ルーベンスなども自身の作と工房の作との区別がつきにくくなっている。ガレも自身の工房を率い、制作にあたっていた。
 
最後にだが、ラ・トゥールはレンブラントと並び、光と暗闇の相反する二面性をを非常に効果的に使用した画家といえよう。ガレと言えば、そのガラス工芸がランプへと転用されていったことは周知のことであろう。
 
このようにある意味同じ土地に、同じように生きた、しかし300年の年を隔てて生きた二人の展覧会が、たまたま同じ時期にこの極東の島国で開催されているのも、なにかの巡り会わせだろうか?
 
ラ・トゥールの現存作品は世界で40点あまりだという。フェルメールなみに少ない。したがって今回の展覧会にも多くの模作がまざっているのが興味深かった。しかも1点ではなく、同じ構図の似たような作品がいくつも見られるのが彼の特徴だ。基本的には、光の使い方にやはり相当の技術が必要のようで、光が人工的に白くなりすぎて描かれているものに、模作が多かったように思えた。個人的にはルーブルに所蔵されている”ダイヤのエースを持ついかさま師”、ナントの”聖ヨセフの夢”(特にその天使の顔の光の扱い方)、”荒野の洗礼者ヨハネ”、バッキンガム宮殿所蔵の”手紙を読む聖ヒエロニムス”が素晴らしかった。メトの”女占い師”が一番見慣れた作品だが、残念ながら今回は展示されなかった。次にN.Y.C.に行くときの楽しみにとっておこう!!カラバッジオ派とも呼ばれているので、彼のファンの方にも必見の展覧会だ。(国立西洋美術館で5月29日まで)
 
エミール・ガレ展は、江戸東京博物館で4月3日まで開かれた後、大阪の国立国際美術館に4月12日から5月22日まで巡回する。今回の展覧会で一番の発見は、ガレが陶器も製造していたことだろう。今回展示された陶器のほとんどが松江北堀美術館所蔵作品であったのも驚きだった。ガレと言えばガラスと思い込んでいたため、新鮮な驚きだった。ジャポニズムの影響濃厚で、特に竹の形の植え込み鉢と、ざくろを模した花器が素晴らしかった。初期のガラス器はイスラム風や日本風で多くは面白みに欠けるが、その中では備前焼の獅子頭火入れを模したガラスの花器は秀逸だった。中期になるとおなじみのトンボなどの昆虫が多く現れてくる。エルミタージュ所蔵のトケイソウを模した壷が特に素晴らしかった。後期になるとガラスを削る一番有名なグラビュールという技法だけではなく、溶けたガラスを溶着したり、ガラスの層の間に別のガラスをはさみこんだりと、様々な超絶技巧のオンパレードとなってくる。多くの名品の中でも、デンマーク王室のコレクションは特に秀逸で、やはりキューレターの優秀さの現れがつぶさに感じられた。
 
こうした面での日本の立ち遅れは明治時代から続いているようで、ルーブル、メトロポリタン、ナショナルギャラリーなど各国が常設展だけでも多くの観光客を呼びこめる名作を数多くそろえているのに、日本にはそれに匹敵する美術館がないのはまことに嘆かわしいことだ。教育もまたしかりで、ゲルニカがピカソの作品だと受験で覚えさせられても、どうしてゲルニカが素晴らしいかについては教えない日本の現在の教育では文化人がそだつはずがない。
 
そうした話はさておき、この展覧会ではガレの歴史が、年代をおって楽しめるようになっている。アールヌーボー好きの日本人には特におすすめの、嫌いな人でも十分に楽しめる素晴らしい展覧会だと思う。
 

cornell5553 at 14:04│Comments(15)TrackBack(4)美術評論 

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1. ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展  [ Sweet Dadaism ]   2005年03月24日 21:00
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2. 「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展」  [ 弐代目・青い日記帳 ]   2005年03月28日 13:13
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この記事へのコメント

1. Posted by マユ   2005年03月24日 21:04
TB有難うございます。
こちらからもTBさせていただきました。
ガレ展はまだ行くことができていません。「手」の作品を見たいと思っているのですが。
かつて熱海にあったサンクリノ美術館、今は休館してしまっているのでしょうか・・
詳しいことは知りませんが、あそこで幼い頃に見たガレの印象が10年以上経っても忘れられずにいます。
機会があれば是非またご訪問下さい。
2. Posted by Moebon   2005年04月02日 23:47
ごぶさたしました。
遅くなりましたが、TBありがとうございました。
パリに出張していました。
来週、ようやく観に行けます!
楽しみです!
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