2005年02月09日

映画"シルヴィアー”カミーユ・クローデル、フリーダ・カーロとの類似性”ー

シルヴィア今年の抱負は最初に掲げたように私生活の充実子供の頃から映画鑑賞が趣味で、大学時代は映画評論家になるのが夢でした。去年は月1度ぐらいしか映画を見れませんでしたが、今年は週1回が目標最近見たシルヴィアについて評論したいと思います。
 
シルヴィア・プラス(1932−1963)は20世紀後半のアメリカ出身、イギリスで活躍した詩人、夫の浮気などに悩み苦しみ、オーブンに頭を突っ込みガス自殺を遂げます。彼女は死後に夫のテッド・ヒューズにより出版された詩集で、栄誉あるピューリツァー賞を受賞します。その劇的な生涯により欧米では女性の圧倒的な支持を受けているそうですが、彼女の生き方は天才芸術家としては珍しくない、破滅的一生といえましょう。
 
シルヴィアはハーバード、エールなどの米国東部私立名門大学、いわゆるアイビーリーグ(7校、実際は8校)に対して設立された東部私立名門女子大、セブンシスターズの一つスミス・カレッジ(1950-55)出身です。余談ですが昨年公開されたジュリア・ロバーツ主演の”モナリザスマイル”は63年のウェーズリー・カレッジというやはりセブンシスターズの一つを舞台にした物語で、多少時代は下りますが、シルビアが暮らしたセブンシスターズのイメージがつかめるでしょう。
 
非常に美人で、しかも才気にあふれたシルヴィアがアイビーリーグの名門大学の子弟に人気があったのは想像に難くありません。フルブライト留学制度でイギリスのケンブリッジ大学に55年留学し、テッド・ヒューズと出会うことで彼女の人生の歯車が狂い始めます。テッドの詩を読んだ彼女は出会う前からテッドに恋したのかもしれません、なぜなら詩は彼女にとっては人生のすべてでしたから。そして、人生で初めて自分が認められる男性に出会ったわけですから。
 
映画でも、出合った翌年56年にボストンに二人が戻り、初めてテッドを紹介されたシルヴィアの母親が、不安感を抱くシーンが描かれます。それまでのシルビヴィアが出合った男性は、ハーバードだろうとエールだろうと、彼女が優位に立てたわけです。彼女の大切とする詩においては、彼女がまさっているわけで、彼女は彼らにそれほどの魅力を感じない、反対に彼らにとって、ただきれいなだけでなく、才気にあふれ、既に多くの詩を発表し詩人としても認められていた彼女は、脅威でした。だから、母親もコントロールするのはシルヴィアのほうであるため、安心感を抱いていたわけです。しかし、詩においてもシルヴィアに勝り、さらに女性に人気のある風貌、雰囲気、声を備えたテッドを紹介され、母親は、コントロールするのはシルヴィアではなく、テッドだと悟り、彼に頼みます”いつでもシルビアに優しくしてくれ”と。しかし、その約束は破られます。女性がどこに行ってもテッドをほっておかなかったからです
 
ここでの不幸はシルヴィアが純粋であるために、テッドの浮気を許せなかったことです。さらに人一倍感受性の豊かな彼女は夫の浮気に気づいてしまいます。その結果、大喧嘩、別れにつながるわけです。ここで普通の女性でしたら自分も浮気をしようとなるかもしれません。映画ではシルヴィアもそれを試みます、テッド、シルヴィア共通の友人である編集者にその申し出は断れます。しかし、実際そうなったとしても、彼との愛人関係は長くは続くはずがありません。テッドが彼女にとって唯一の恋人だからです
 
この自分にとってかけがえのないもの、シルヴィアにとっては詩ですが、そこでの自分より優れた人を単に尊敬するのではなく、愛情と一緒にしてしまうのが天才女性芸術家に共通する悲劇といえましょうシルヴィアが映画の中でテッドに復縁を申し出、愛し合うシーンが出てきますが、そこで彼女はテッドに会うまで自分は半分だった、テッドに会えて初めて一つになれた、二人でいないとまた半分になってしまうとテッドに語っています。彼女にとって男性はテッド以外ありえないのです。残念ながらテッドにとってはシルヴィアは少なくとも肉体的には大勢のうちの一人なのですが
 
カミーユ・クローデルにとっては、唯一の男性はロダンでした。彫刻家として彼女が自分より優れていると唯一認めているのが、ロダンだからです。カミーユは豊かな家に生まれ、美しく、彫刻家としてもすぐれていたので、20歳も年上で、愛人もいるロダンを男性として選ぶ必要などまるでないというのが我々凡人の考えです。ましてロダンと別れたからといって、気が狂う必要があるのでしょうか?天才と狂人は紙一重といいますが、やはり天才であるゆえにカミーユのように気が狂ったり、シルヴィアのように自殺することになるわけです。こうした美しい女性芸術家が、自分の芸術の分野で自分よりも優れた人を唯一の愛情対象にしてしまう他の例としては、フリーダ・カーロのディエゴ・リベラへの愛も有名でしょう。
 
テッドはシルヴィアを、ロダンはカミーユを芸術家として認めていましたし、女性としても精神的に愛していました。他の女性への肉体的な愛情をシルヴィアが、カミーユが見て見ぬ振りをできれば、こうした不幸な結末には至らなかったでしょう。
 
ロダンは後にカミーユを見捨てて舞い戻った長年の伴侶ローズ・ブーレと死の直前77歳で結婚しています。やはり落ち着ける、平凡な女性がよかったのでしょうか?世の中の女性にとって言えることは、魅力的な、モテモテの男性との結婚はハイリスク・ハイリターン、肉体的な浮気をされてもローズのように見て見ぬ不振りができなければ、不幸になるということなのでしょうか?
 
精神的な愛情と肉体的な愛情との違いについてはまた他の機会に述べてみたいと思います。
 

cornell5553 at 17:57│Comments(2)TrackBack(2)映画評論 

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1. シルヴィア(2005/1/7)  [ えいがにっき ]   2005年03月08日 14:32
今年もまだ1週間しか経っていないというのに、早くも「2005年Best Movie」決定かも。 グウィネス・パルトローが本当に「良いな」と思えたのはこれが初めてです。 一昨日観た「五線譜のラブレター」のリンダとは正反対と言ってもいいような人生を送った実在の詩人の話です。
2. ベル・ジャー  [ えいがにっき ]   2005年03月08日 14:32
1月の時点で早くも私の「今年のBest Movie」になるか?と思われた映画「シルヴィア」の主人公シルヴィア・プラスの唯一出版された長編小説。 コピーには「少女版『キャッチャー・イン・ザ・ライ』」となっているけど、サリンジャーのこの作品は実は未読。代わりにジョン・ア

この記事へのコメント

1. Posted by bright_moon   2005年03月08日 14:37
こんにちは。
コメントとTBをありがとうございました!
「シルヴィア」は、早くも私の「2005年度Best Movie」決定かも?です。

こちらからもTBいただいた「ベル・ジャー」と、映画「シルヴィア」からTB張らせていただきました!
2. Posted by buy tramadol   2006年04月18日 22:42
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